嫌いではありません。 ひどいことをされたわけでも、大きな喧嘩をしたわけでもない。
ただ、帰ってきた足音を聞いても、何も動かない。 昔はこの人の何が良かったんだったかな、と思い出そうとして、思い出せない。
そのことに気づいてしまった夜は、たぶん、少し怖かったと思います。
言葉にした瞬間から、逃げ場がなくなる
好きじゃないかもしれない、という言葉のこわいところは、口に出した途端に、そこから先の話が始まってしまうことです。
じゃあ別れるのか。子どもはどうするのか。生活はどうなるのか。 そこまで一気に見えてしまうから、多くの方は、思いつく前に思考を止めます。止めて、なかったことにして、また明日の献立を考える。
そして、そういう自分を責めます。 一緒にいるのに、こんなことを思うなんてひどい。ちゃんと向き合っていない証拠だ、と。
けれど、気持ちが動かなくなったことは、裏切りではありません。 まして、あなたが冷たい人間だという証明でもありません。
長く一緒にいれば、感情の温度は変わります。変わらないほうが珍しいくらいです。 問題は、変わったことそのものではなく、変わったあとの扱い方が誰にも教えられていないことのほうにあると思っています。
鑑定師としての見立て
わたしが学んできた帝王学陰陽五行の見方では、人には生まれ持った気質の型があり、そこに運気の巡りが重なっていくと考えます。巡りには、外に向かって開いていく季節と、内側にこもって整える季節があり、どちらも必要なものです。
そして、この巡りは、その人の感情の動き方にもあらわれます。
外に開いている季節には、人に会いたくなり、誰かを好きになりやすく、心がよく動きます。 内にこもる季節には、その逆のことが起きます。人と関わること自体が重くなり、感情の振れ幅が小さくなる。喜びも、腹立ちも、以前ほどはっきりしない。
このとき、多くの方が「相手への気持ちが冷めた」と受け取ります。 けれど、動きが鈍っているのが相手に対してだけなのか、それとも全体的にそうなのかは、いちど確かめてみる価値があります。 好きだったはずの食べ物にも心が動かない。友人からの誘いも面倒。そういう状態が同時に来ているなら、それは夫婦の問題というより、あなた自身が内にこもる季節にいるのかもしれません。
わたしは、長く続く関係の感情を、焚き火のように見ています。 はじめのうちは炎が立ちます。明るくて、遠くからでも見える。けれど、炎は薪をくべ続けないと保てません。 炎が落ち着くと、下には熾火が残ります。赤い光は静かで、離れて見ると消えたように見えます。けれど、手をかざすと、まだ熱い。そして、料理を作るのに向いているのは、実は炎より熾火のほうです。
好きじゃないかもしれない、という感覚は、炎を探して見つからなかった、という報告であることがよくあります。 熾火のほうを確かめたかどうか。そこが、まだ残っている場合が少なくありません。
ただし、これはどんな関係も続けるべきだ、という話ではありません。 熾火まで冷えてしまっていることも、実際にあります。そのときは、確かめた結果としてそう分かっただけのことで、あなたが確かめ方を間違えたわけではありません。
もうひとつ。もし最近、急に全部を変えたくなっているとしたら、少しだけ立ち止まってみてください。 宿命鑑定では、心が揺れやすくなる時期があると考えます。その時期には、普段しない動き方をしたくなり、現状を大きく変えたくなります。結婚も、別れも、その対象に入ります。 気持ちが決まったのか、季節が揺れているのか。ここを分けるだけでも、この先の選び方はずいぶん変わります。
同じ生まれの人でも、環境や生き方によって歩む道は変わります。当たり外れではなく、いまはそういう季節なのかもしれない、と少し引いて眺めてみてください。
今日からできる、小さな一歩
答えを出すためではなく、答えを急がなくて済むようにするためのことを置いておきます。
- 今日は、相手の良いところを探すのをやめる。探して見つからないと、余計に落ち込みます。探さない日をつくるほうが先です
- 好き以外の言葉で、いまの関係に名前をつけてみる。同居人、戦友、家族、まだ分からない。名前がつくと、好きか嫌いかの二択から降りられます
- ひとりの時間を三十分だけ確保する。相手から離れるためではなく、自分の心が動くかどうかを確かめるためです
- 心が動いた瞬間を、今日ひとつだけ探す。相手のことでなくてかまいません。動く力が残っているかどうかが分かれば、それで十分な情報です
- 結論を出す期限を決めない、と決めてしまう。いつまでに答えを出すという圧を外すだけで、考えごとの重さがかなり変わります
ひとつでも十分です。何もしない日があっても、先延ばしではありません。
おわりに
好きかどうかを、今日決めなくていいのです。 決めなければいけないと思っているのは、たぶんあなただけです。
炎が見えないことと、火が消えたことは、同じではありません。 そして、どちらだったとしても、確かめようとしたあなたは、この関係にちゃんと向き合っています。
話が通じないと感じている方には、夫と話が通じないと感じたら——宿命の型が違うだけかもしれませんも置いておきます。
もし気持ちのつらさが長く続いていたり、安全に関わる不安があるようでしたら、専門の相談窓口も頼ってくださいね。外に相談することは、家庭を壊すことではありません。